新連載

チェリスト 津留崎直紀の

オーケストラ エクササイズ

 

 

 

 

 

オーケストラ エクササイズ

始めに
1. Rossini Otello
2. Beethoven Symph. 9 finale
3. Bartok Concerto for orchestra

 

 

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はじめに


 今回からオーケストラのチェロパートについての新連載を始める。

  30年以上この仕事をしていてオケパートと言う代物が時に大変難しいものだと最近良く思う。そもそも複数の人間が同じ音を同時に、間違えなく、良い音程で、正しいリズムで、正確なニュアンス(ダイナミックス)で、、、まだまだあるがもうやめよう。そういういわば人的困難に加えてパッセージその物の純粋な難しさと言うものがたくさんある。それもコンチェルトやソナタなんかよりもずっと難しいようなものも多い。幸い「複数人」で弾いていることで「ごまかし」も利くという面もあるが、それに頼っていては腕が落ちるのだ。
 
話はすこし変わるが、近年になってからコピー機が異常に発達してコピーしたパート譜がオケのライブラリーが出してくれるので、オケの練習前からしっかりさらっておけるようになった。その昔コピーもあまり発達していない頃は、(あったとは思うがコピー一枚あたりの単価が高かったのか)、今のようにパート譜をコピーしてあらかじめ渡してもらえる事はあまりなかった。勢いオケの練習の初日は初見ということも多かった。反対に貸し譜が練習の初日にやっと届くなんていう日、早めに行ってどんな「譜づら」なのか少しわくわくしながら仕事に行くという楽しみもなくなってしまった。その背景には運送配達行の発達もあるのだろう。実際30年以上前「神々のたそがれ」の時だったと思うが、何かの手違いか貸し譜が先週までどこかで使われていたかで、オケのリハーサルの初日は全員初見だったことがある。オケマンはまず初見力が問われた時代だった。今はコピー機もものすごい速さでコピーできる。100ページくらいのオペラでも、ものの1分とかからない(と思うが調べたわけではない)。作曲家が時に何年もかかって脂汗を流し、時には血や涙すら流して書いたものが、今はオケのライブラリーに頼めばあっという間に出来てしまう。バッハは夜な夜な薄暗いローソクの下で他の作曲家の作品を写したために晩年は失明したのに。いったいこんな非人間的機械、誰が作ったんだ。日本人に違いないぞ!しかしこうコピー譜が普及してしまうと今度はさらってこないほうが悪いことになる。初見など早くても練習してきた人にはかなわない。 だから、さらわざるを得ない。おそらく今のオケマンの初見力は昔より低くなったと思う。
 話が大幅にそれた。オケのパート譜もしっかりさらうと下手なエチュード等よりよほど上等だったりするし、第一実用的である。エチュードの一環として音楽大学などでももっと積極的に取り上げたらいいと思う。ちょっと思い巡らしただけでも、ベートーヴェン、ハイドン、モーツァルトは言うに及ばず、バルトーク、ワーグナー、シュトラウスいくらでもある。オペラばかり30年以上やってきたのでこの項はオペラが多くなると思うし、手元にない楽譜もあるので偏りがちになるかもしれないが、出来るだけ多くの曲を取り上げていこうと思う。
 まあそんなわけで、この際30数年オケマン稼業で重ねた馬齢の言い訳と、罪滅ぼしとして、後学の若い世代の方々、あるいはアマチュアの方にも、オケパートの難所を僕なりの注釈などを交えてできるだけ多くの楽譜入りで紹介して行こうと思う。

 

2010年11月

尚、このサイトに掲載する楽譜はすべて私個人が作成したもので、出版物のコピー等は一切使われていません。又万一著作権法などに抵触した場合は予告なく削除することもあります。