弦楽器専門雑誌 サラサーテ
4月号の特集「悪魔のトリル」に僕の記事がでています

 

サラサーテ

 

 

 

 

 

 

野平一郎氏と(2011年12月)

2011年旧奏楽堂でのゲネプロ

 

 

 

 

 

リヨンオペラ座オケで弾いている筆者

オーケストラ

大人になってから初めてチェロをやってみようという方

 大人になってチェロを始める方の多くは、ある一定の目標を持って始める方が多いようです。これは非常に励みにもなるので、そういう目標はどんどんお造り下さい。目標となりうる事としてはいろいろあるでしょうが、例えば
①「白鳥」「愛の挨拶」のような曲を半年くらいで弾けるようになりたい、
②バッハの無伴奏を弾きたい、弾けるようになりたい、
③アマチュアオーケストラに参加して「第9」を弾くのが夢、、、などでしょうか。

 

こういう方達にも2つのカテゴリーがあります。


第1カテゴリー:音楽もチェロも全く始めての方

 
 音楽の基礎知識が全くなく経験もない。初めての音楽体験としてのチェロという場合。今までに何人かはこういう方を教えましたが正直申し上げてこういう生徒さんは教える方は難しいです。チェロを弾くことに加え楽譜を読む事、いわゆるソルフェージュの部分がレッスンに必要になるからです。

 野球を全く知らない人に野球のルールを教えながら(大変複雑ですね)バットの握り方、振り方、ボールの投げ方、走り方、を教える事を考えてもらえれば少しはご理解していただけるかもしれません。しかし、こういう方の情熱は良く理解できますし、野球と同じようにプレイしながら学んで行く事ももちろん可能ですので決してお断りはいたしません。ただし、楽譜の読み方などに関してはある程度生徒さんの自己努力の部分が必要になってきます。

 「ソルフェージュ」というと大変難しい専門的な事のように聞こえるかもしれませんが基本は学校の音楽の授業で習った基礎を覚えていればそう厄介な事ではありません。幸いに日本は音楽を義務教育で教えている世界でも稀な国です。これだけは是非続けてほしいと切に願っています。「ドレミファソラスィド。ドスィラソファミレド」と音階の上下をすらすらと言えるようにして来ていただければ大変ありがたいです。

 さて、こういう全くの初心者の為には大変良く出来たウエルナー著の「チェロ教則本」があります。この教則本は上記のようにソルフェージュとチェロ奏法を同時進行で行う大変優れた教則で、私も子供の頃この教則本で独学しました。今からチェロをという方はむしろこの本をチェロより先に購入する事をお勧めします。Ymahaや全音等の楽譜コーナーにはたいてい置いてあります。これを見るだけで大体どんな事をこれから学んで行くのかが想像できると思います。その他の教材に付いては各生徒さんのご希望にお答えするようにいたします。

 

第2カテゴリー:
ピアノやヴァイオリン等を習った事がある方。学校の吹奏楽部などで音楽の経験がある方。


 こういう方は第1カテゴリーの方より数歩先んじている事は確かです。良く質問されるのがヘ音記号、ハ音記号が読めないという質問です。ご存知かもしれませんがチェロは一般的に低音部はヘ音記号、中音域はハ音記号、高音域はト音記号と3つの記号を使います。

 この記号に対してアレルギーの方も結構多いかもしれませんが、ご心配には及びません。このうちのどれかの記号をしっかり覚えていればあっという間に覚えられる方法をお教えします。一つだけヒントをお教えします。決して「ハ音記号のドはト音記号のレだから一つ下げて読む」を決してやらない事です。始めのうちはへ音記号が主ですが、ヘ音記号もト音記号がしっかり読めるようになっていればすぐになれます。このカテゴリーの方もチェロは始めてですから上記のウエルナーを使って始めましょう。写真の解説が解りやすく出ているのでとても便利です。

 

既にチェロを弾いた事がある方、習った事がある方(始めての方もお読みください)

 一般的にはこういう方が一番多いですが、良く言われるのが「悪い癖がいっぱいあって」という方です。自己診断、自己批判は音楽演奏に欠かせない大切な事ですが、ちょっと待って。実は多くのアマチュアチェリストが陥っているのが「自己過剰批判症候群」です。音程が悪い、シフトがきちんとできない、弓が思うように動かない、、、、まだまだたくさんありますが、ではプロと言われている人たち、有名なチェリスト達はこれらの問題を全てクリアーしているのでしょうか。答えは「否」です。これらのは「僕のフィロゾフィー」にも書いたように日々の怠りないトレーニングの賜物なのです。どんなに上手い人でも1週間練習を怠ればそのつけは必ずやってきます。特に「音程」は弦楽器奏者にとって一番大切な事柄です。指のトレーニングを怠ればどんなに耳が良くてもすぐさま音程は不安定になります。

 耳についても時々聞かれます。「私はオンチなので、、、」とか「音程がよく聞き取れない」とかです。フランス語に「オンチ(音痴)」という正確な訳語はありません。どうしても言おうとするなら「音感が悪い」くらいな複合名詞になるでしょう。(フランス人にオンチがいないという意味では決してありません)日本語にはこんなに便利な?おかしな言葉があるけれど、果たして「オンチ」とは何でしょう。多分音階や知っている歌を(大体)正しい音で歌えないというくらいの意味でしょう。しかし、これはまずその人の声帯の訓練という問題が一つ、そしてその人が育った音楽環境とか、音楽的経験の量と質の足りなさからくる物であって、決して「先天的」な物ではないと断言できます。ついでに言えば「音感が良い」とか「絶対音感がある」とか言う才能も「先天的」な物ではありません。ではどう言う事なのでしょう。

 答えは「音感も訓練によって獲得されるもの」です。持って生まれた才能という物があるとすればその訓練によってどのくらい上達するかの違いが「才能」のちがいでしょう。ではどうやって音感を養うのか。

 そこで僕がお勧めしているのが「基礎練習法」に書いている「チェロ座禅」です。この基礎練習は音階という世界で最もに美しい旋律の一つを弾きながら、チェロを弾く為の基本的筋肉トレーニング(はい。チェロを弾く為にはある程度の筋肉的トレーニングが必要です)をしながら、同時に音感を養って行くという大変有効な練習法です。

 「基礎練習法」に書かれてある八分音符=32は始めのうちとても大変なので、生徒さんには3オクターブで八分音符=50前後を目標にやってもらっています。「音程」については僕もその都度、毎度、毎回必要に応じて耳にタコができるほど言われましたが、僕もタコができるほど言います。それぐらいやってやっとなんとかなるくらいに思ってください。良い音程の為には技術的な面でのサポート、例えばシフトの仕方、左手の形、時には右手の使い方すら音程に関係してきます。

 

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