ストラディヴァリウス

ストラディヴァリウス

 

 

 

チェロの購入に関して


 始めにお断りします。私はチェロ購入に関してはご相談があればできるだけお手伝いしようと思っています。ご希望のチェロについての意見も聞かれればお答えしますが、斡旋などはしません。またそれに伴う謝礼なども受け取りません。ただし購入時に楽器屋を見て回わったり試し弾きなどをして時間的に拘束を受ける場合、始めに仲介料(価格の5〜10%程度とお考えください)を設定してから行います。

 さて、楽器ですがこの青天井の世界をどう思われるかはひと様々でしょう。最低価格帯でも20万円ほどはしますが、ストラディヴァリウスなどは数億円の世界です。いったいどう言う事?と思われる方も多いでしょうが、「芸術」という得体の知れない世界にあなたもほんの少し足を踏み入れてしまったという事は出来るでしょう。巷の数多くのコンサートの入場料も然りです。その適正価格はどうやってはじき出されるのか?ある有名チェリストはひと晩演奏して数千万円のギャランティを受け取るかと思えば一週間のリハーサルと本番2回で数万円にしかならないプロの仕事もあります。楽器も残念ながらこの理論をもっと突き詰めたような世界で価格が決められているようです。

 話が少脇にそれましたが、初めてのチェロを購入する場合多くの方が大変迷うのが、良い物を買ってしっかりやろうと思うか(この場合50〜60万円ほどの楽器を想定しています)、取りあえずは最低価格の物で始めて様子を見てみようかでしょう。このどちらも考え方には一理ありますが個人的な意見では100万円前後の楽器は得てして中途半端です。オールドと日本で呼ばれている19世紀~20世紀初頭のイタリア、フランスなどの楽器は安い物でも既に300万から1千万近い値で売買されている物が少なくありません。こういった楽器を購入する必要は所謂初心者にはあまりお勧めしません。

 それでは100万円前後の楽器とはいったいどのような物でしょう。これが以外にはっきりしない。「なんとかニーニ」とか言ったわかったような解らないような名前がついているのが価値がありそうに思われるかもしれません。こういった楽器を買う場合一番重要な問題は楽器が今後「付加価値」が付いて行く楽器なのか、または単なる「中古品」になるかの違いです。私自身もこれらの楽器は何とも言えない物が多いので一概には言えませんがあまりお勧めできる価格帯ではない事だけをここで申し上げておきます。

 これにくらべて最近多く出回っている中国製などの「工業製品」としての楽器は時に驚くべき良い楽器があります。価格帯も手頃です。とは言っても30万前後ですので結構な出費でしょう。こういう楽器はフランスでも生徒に相談されて何人かが購入しました。これらの楽器は多くの場合欧米などの楽器作り職人がしっかりした図面で型作りをして、オートメーション化した工場で(多くの場合中国なので中国製という事になっているようです)量産できるようにした物ですが、ニス塗装組み立てなどかなりな部分手作業のようです。材質の良い木が使われきちんと組み立てられていればそれなりに「良く鳴り」ます。ただしこういった楽器は100年経っても今の値段より高くなる事はおそらくないでしょう。

 最後に現在楽器作りとして工房を構え制作している新作楽器があります。フランスではミルクールに国立の学校が出来た事もあり最近は優れた新作楽器が多く出ています。またイタリアでもクレモナの学校が有名ですが日本にも最近は新作楽器が増えています。これらの楽器はもちろん今後値が上がって行く事が想像される楽器で大変優れた楽器も多くあります。価格帯は300万前後です。

 

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