この秋東京文化会館、東京オペラシティーなどでチェロソナタと室内楽のコンサートシリーズを6回にわたって開催いたします。 是非お誘い合わせの上ご来場ください。 ピアノの共演者はこれまで何度か一緒に演奏してきた旧知の方々ばかりだが、日本の音楽界、ピアノ界を牽引しているといっても過言ではない錚々たる顔ぶれである。またこの数年来力を注いでいる作曲家としての作品もいくつか取り上げてその活動の一端をおききいただきたい。
野平一郎氏とはパリの留学時代から伴奏してもらった仲で、その後もリサイタルの共演などを何度も行いました。 リヨンオペラ座でまだ未完だった「ふたつの肖像」を取り上げた時は、そのコンサートのために第二曲「Nachtmusik」を完成し、完全版の世界初演をする光栄に預かりました。今度のシリーズでは彼の近作Enigmeにも挑戦します。
植田克巳氏は芸大入学当初から、北海道出身という事で気軽に声をかけていただいた大先輩でした。在学中からいろいろお世話になりました。 僕のフランス留学の記念コンサートでブラームスの2番などを共演していただいたほか、95年の東京でのリサイタルでも共演していただいた。ベルリン留学中はお宅に押しかけて「ベルリン芸術週間」のカラヤンやアッバード指揮のベルリンフィル、ウイーンフィル、シュターツオパーのディスカウ最後のハンス・ザックスなどのチケットを取っていただいて、聞く事が出来たのは今から思うととても貴重な体験だったと思う。 ロンティボーの時はパリで到らずながら通訳や小間使いをさせていただいたのが、ちょっと自慢です。
渡辺健二氏。通称「ケンタロー」。在学中はほとんど僕の専属伴奏者でした。本人も副科チェロをやっていたので、確か向こうから伴奏を申し出てくれたような気がする。一年生の時だったか、ピアノ課伴奏試験にブラームスのソナタを弾いてくれと一週間前に頼まれて大慌てで練習した楽しい記憶もあります。 2年前にほぼ40年ぶりに上野で再会。芸大副学長と酒を飲むのは勿論生まれて初めて。ちょっと緊張したがちっとも変わっていなかった。かなり忙しいらしい口調だったので、ちょっと一杯で失礼と思って呑み始めたが、思い出話は尽きず、店を出たのはもう11時を回っていたのじゃなかったか。ケンタローは多分もう電車が無かったはず。今回の企画は実はこの時の会話がきっかけになっている。とはいえ、彼にはこのことに関して何の責任も無いのは言うまでも無い。
海老彰子さん。芸大、コンセルヴァトワールとほとんど同じ時期に同じところに通った幼なじみもようなものです。パリでは住んでいた所も近くで学校から帰る時良くバスで一緒になりました。室内楽のクラスも偶然同じモーリス・クリュット氏のクラス。いろんなソナタやトリオを初見で毎週弾くのが楽しかった。当時すでにロンティボーの入賞者だった海老さんはクラスでも特別だったけれど、その海老さんと一年目からトリオをさせてくれた先生に内心感謝したものでした。残念ながら2年目からは試験曲に取り掛かり、学校の規定で外国人同士ではグループを組めず結局ご一緒できたのは1年のみ。ずっと心の中でまたもう一度と思っていました。その思いを(笑)先年お会いした時に話しました。 (片思いかと内心ドキドキ) ところが彼女もさっそく賛同してくれて本当にうれしかったな。マネージメントなどの関係で結構複雑な問題もあったようですが今回のシリーズに参加いただけて感謝の気持ちで一杯です。
ジャン・ミッシェルとはリヨンオペラ座オーケストラ創立以来の仲。 いわばこの年までいつも共に数々の場を踏んできた「戦友」。長い間の懸案だった日本でフロレスタンカルテットと共演が2008年にやっと実現できた。 震災と福島原発の事故で来日をキャンセルするアーティストが続出している昨今、実は今回は見合わせようかとかなり迷った。一応本人にも確認してからと思い、心配していないか聞いてい見たけれど、全く問題なしとの、大の親日家ジャン・ミッシェルの言。反対に大丈夫日本人だったらこの困難を絶対克服できると慰められた。今回はブラームスと自作曲「ある風景の思い出」のほかにメシアンの大曲「世の終わりのための四重奏」を上野眞樹、野平一郎両氏と共演できるのも楽しみの一つ。
チラシのメッセージ 作曲をするようになってから音楽の聴き方が大きく変わったと思う。参考になるものは何でも聞きたくなったし、あらゆる音楽に偏見が無くなった。クラシックは当然としても、ジャズ、民俗音楽、時には流行音楽でも聴く。バロックからと限定しても現代までに「音楽」はほとんど無尽蔵にある。オーケストラの仕事はそういう好奇心を持つものには素晴らしい環境である。黙っていても向こうから音楽がやってくる。その中にはこの仕事をしていなければ多分知りえなかった曲も数多くある。 |
フロレスタンカルテット。オペラ「フィデリオ」の主人公レオノーレノの夫で政治犯として獄中にいるフロレスタン。圧制からの開放というテーマを扱ったこのオペラはまた夫婦愛も影の重要なテーマである。ベートーヴェンのカルテットに魅せられた二組の夫婦のカルテットの名前にこれほどふさわしい名前があるだろうか。僕たちがカルテットを一緒に弾き始めたのは、同い年のお互いの長女同士をゆりかごに入れて寝かしつけてから弾いたものだったから、80年代の始め頃だった事になる。毎夏休みや春休みにどちらかの家に集まってヴァカンス気分でカルテットを弾いていた。初めの頃は持っている楽譜を片っ端から弾いてみるいわゆる「初見大会」が楽しかったのだが、そのうちさすがにそれも飽きた。この次からは曲を決めて各自練習して来ようという事になった。真剣に練習を始めてみると今度は大変な事に気づいた。よくカルテットを続けるのは夫婦を続ける事よりも難しいといわれるけれど、われわれはその二つを同時にやっていたのだ。 しかし同級生だった事が幸いしたのか、利点も多かったからこれだけ長く続いたのだとも思う。どんな利点だったかはここではいえない。上野眞樹氏がフィルハーモニアウンガリカの解散と同時に日本で活動する事になって以前のような活動は出来なくなったが、今回の企画には是非カルテットを入れるつもりだった。
プログラムについて あれこれ
これだけ数多くのソナタを続けて弾くのは勿論初めて。不安が無いといえばうそになるが多分乗り切れるだろうという自信はある。 それはオペラを長年弾いてきた事と、バッハの全曲演奏会を何度もやってきたことから来ていると思う。 オペラは特にワーグナーやシュトラウスといった巨大オペラは一晩でかなりな数のソナタ、又はカルテットを弾くくらいの体力と集中力を要する。 ついこの間弾いた「トリスタン」はちょっと考えてみたがベートーヴェンのカルテットだったらラズモフスキー以後の6曲くらいに相当するのではないだろうか。
その点バッハは音量を押えて弾けるので集中力は別にしても、体力的には意外に楽である。
さてソナタだがカルテットとバッハとはまた違う難しさがある。ピアノという巨大な楽器とチェロの低中音域で格闘(失礼)しなければならないのでかなりな音量を要求される。 オーケストラでコンチェルトを弾く方がかえって楽なくらいな曲もある。だから、ピアニストの選択にはいつも悩まされる。誰に共演を頼もうかまず考えた時、この際自分のことは棚に上げてピアニストは一流のピアニストに頼もうと決めた。考えてみたらこんなに素晴らしい知り合いが何人もいたのだった。
ベートーヴェン全曲を弾く事はまず念頭にあったが、どういう風に行うかでずいぶんと悩んだ。 全曲を何回かに分けて3つの「変奏曲」もあわせて取り上げたかったがいろいろ考えているうちに諦めざるを得なかった。 そうすると一人の共演者と一晩でという事になる。その方がプログラムとしてもインパクトがあるが、問題は誰と弾くかである。 4人全てのピアニストと4回ベートーヴェン全曲をする事まで本気で考えてみた。それぞれ異なった個性のピアニストと4回ベートーヴェンを弾くのも、エキサイティングな事だろうが、聞く人のことも考えて勿論断念した。 結論的にはベートーヴェンを一番回数を多く僕と弾いてくれた野平氏に決めたのだが、他の3人と一度も弾けないのも少しばかり心残りである。
他の曲に関しては各ピアニストの個性や経歴を考慮してプログラム選びをし、出来るだけ一晩の曲目に統一性をもたせる事を心がけた。 それに伴ってずいぶんたくさんな曲を切り捨てざるを得なかった。その中で特に残念だった曲をいくつかあげると、バッハのガンバソナタ、ショパン、マルティヌー、ラフマニノフなどのソナタがある。またデュティユーの「3つのストロフ」、黛敏郎「文楽」、湯浅譲二、ルトスラフスキーなども今回は残念だが諦めた。また別の機会に出来るだろうか。
丹波明氏のElemental
IVは僕の全く勉強不足で知らなかった曲である。ある日丹波さんから他の用事でお電話をいただいた時にそのことを知り、是非このシリーズに取り上げたいと申し出たら、楽譜をさっそく郵送して下さった。楽譜を見てその難易度の高さにかなり狼狽したが、もう後の祭りである。この夏猛勉強をしなければならない。勉強不足の恥かきついでに言うと、この曲は僕の恩師のレーヌ・フラショー女史に献呈された曲で、女史は生前よく演奏なさっていたとのことである。
各公演 全席自由 \4,000
セット割引(3回券10,000円/4回券12,000円/6回券18,000円)
※セット割引はプロアルテムジケのみ取扱(03-3943-6677 info@proarte.co.jp)
津留崎直紀
ソナタと室内楽シリーズ2011
Naoki Tsurusaki(Vc.)
Sonata & Chamber Music Series
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東京文化会館チケットサービス 03-5685-0650 www.t-bunka.jp
東京オペラシティチケットセンター 03-5353-9999
(11/25、11/26、12/3 公演のみ)
尚、私個人宛にはこちらからどうぞ
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日程 プログラム
11月16日 (水) |
東京文化会館小ホール |
共演 : 野平一郎 |
ベートーヴェン チェロソナタ 全曲 Nr1〜Nr5 |
11月25日 (金) 19:00 開演 |
東京オペラシティー リサイタルホール |
共演 : 植田克巳 |
テーマ : ドイツロマン派 R.シューマン : 5つの民謡風小品 |
11月26日 (土) 18:00 開演 |
東京オペラシティー リサイタルホール |
共演 : 渡辺健二 | テーマ : 東欧ロシア近代 |
12月3日 (土) 14:00 開演 |
東京オペラシティー リサイタルホール |
共演 : 海老彰子 | テーマ : フランス近代
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12月8日 (木) 19:00 開演 |
東京文化会館小ホール | フロレスタンカルテット 共演 J.M ベルテリ |
津留崎直紀 : クラリネットと弦楽四重奏の為の「ある風景の思い出」
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12月9日 (金) 19:00 開演 |
旧東京音楽学校奏楽堂 | 共演 : 上野眞樹 J.M.ベルテリ 野平一郎 |
テーマ : 現代日本とフランス
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